スケートリンクの未来

大阪の臨海スポーツセンターが廃止の危機をとりあえず脱しました。このスポーツ施設は、橋本知事が掲げる大阪維新プログラムの初案の中で廃止・売却の対象としてリストアップされていたものです。このセンター内には通年営業のスケートリンクがあります。大阪府内に一般人が利用できる通年リンクは3つあるのですが、そのうちの一つです。というか、近畿圏には大阪以外に通年リンクは存在しないので、近畿圏に3つあるうちのひとつ、それが消えそうになっていました。しかし、そこを日常的に利用しているスケーターの中には、将来日本のスケート界を支える萌芽となる有望な若手スケーターが沢山いるそうで(高橋大輔も昔ここで練習していた)、彼らと彼らを応援する人々、そして関西スケート界の灯を消すまいと思う有志の方々が【臨海スポーツセンター存続の会】を立ち上げ、それこそ寝食を惜しんで、街頭での署名活動や、経営改善案の提出、政界への働きかけ等、東奔西走されました。中には倒れられた方もいらっしゃったと聞きました。結果、5/31、大阪府は臨海スポーツセンターの存続を決めました。

臨海スポーツセンター
http://www.nankai.co.jp/odekake/rinspo/index.html

臨海スポーツセンター存続の会
http://maido.rocket3.net/rinkai/

ああ、よかったなあ!
まずは、おめでとうございます。存続の会の皆様、万が一この日記読まれていたら(てか、読んで手も読んでなくても)、本当にお疲れ様でした。私は関東住まいなので直接センターの収入に貢献するのは難しいですが、ずっと応援していました。本当に、おめでとうございます。橋本知事、尊いご決断をありがとう。

と同時に、今回のことで、スケートリンクというものについて、なんぼか深く考えるきっかけになりました。これもありがたいことだと思っています。

私はフィギュアスケートが好きで、下手の横好きで時々は自分で滑りにも行きます。しかし東京にいるとあまり感じないのですが、スケートリンクの数は、本当に減ってきています。特に地方のリンク。私の故郷の兵庫には、私の記憶の中でも中津に1つ、姫路に1つ、三木にも確かあったと思ったのに、私が故郷を離れている10年くらいの間にみんななくなってしまいました。実際、兵庫だけでなく、地方のあちこちでずんずん減ってるんですね。

不思議なのは、浅田真央ちゃん、安藤美姫、中野由加里、高橋大輔織田信成といった、世界に通用しメダルを狙える逸材があふれるこの日本で、彼らの練習場所となるリンクがどんどん減っている・・・なんで??という思いでした。テレビでこれだけ騒がれていて、オリンピックでもない大会がゴールデンの時間帯で2時間枠をとって放送されているのに・・・ですよ。昔じゃ考えられないくらい皆がフィギュアに目を向けているのに。

リンクが減るのは儲からないからで、客の数が採算ラインを割って経営が厳しい状態です。これだけめぼしい選手が出てきていても、リンクへ足を向ける総人数があまり増えていないことになります。むしろ、減っているのでしょうね。スケートリンクの入場料は、だいたいどこも1200円くらい。貸し靴が400円くらいとして、1600円。スケートリンクで遊ぶ魅力は1600円という金額に釣り合わない、というのが一般の感覚なのでしょうね。そこで年齢別に客層それぞれの感覚を想像してみます。

まずはオトナ。例えば仕事帰りにちょっとボウリングしよう、と思ってボウリング場へ行くと、だいたい2ゲームはやります。2ゲームで貸し靴も入れると、スケートするのと変わらないくらいの出費になります。でも、仕事帰りにボウリングする人はいても、スケートする人は滅多にいません。ボウリングはチーム戦ができるけど、スケートはできない。だから大勢で行って楽しむような類のものではないですね。仕事帰りに行くのは、スケートを本当に上手くなりたい人だけでしょう。

次に老人。プールに行くと、老人の姿を見ない日はありません。老人はプールの中をただ歩いているだけです。プールの中では浮力が働き、体重が少し軽くなって間接への負担が軽くなり、運動がしやすくなります。また、長時間やれば良い有酸素運動になり、ダイエットにも効果的と言われます。そんなわけで、老人でも関節痛になる心配がないプール運動は、数少ない老人が安心してやれるスポーツです。しかしスケートは・・・スケート経験のない老人は、多分靴を履くだけでひと苦労。リンクに立ったら、絶対こけます。こけたら、下手すると骨折れるかも。あまりにも危険です。楽しむ以前の問題で、救急車で運ばれることになるかも。というわけで、老人向きではありません。

じゃあ学生は? 学生は若いし、時間もあります。私もスケートにはまったのは学生の時でした。お金はそんなにないけど、月に1,2度くらいはなんとか行ける。しかしやっぱり、「好きなら」なんですよね。そんなに好きではないけど付き合いで行くというなら、カラオケやボウリングの方がストレス発散になるわけです。やっぱり、「好きだから、上手くなりたいから」という人しか、なかなか足を運ばないですよね。

ではママさんは?? 専業主婦の方だったら、昼間時間が結構ある。小さい子供がいたらいたで、子連れでリンクに来ればいい。料金が安ければ・・・ってとこですかね。でも、もし、スケートリンクが午前中、子供専用みたいになって、幼児が楽しめるようなグッズを沢山置いて、NHKの体操のお兄さんお姉さんみたいなスケートの先生が子供たちの面倒を見てくれたら、そこそこ人集まるんじゃないかなあ・・・例えば私が住んでいる市だと、子育て支援センター等の主催でリトミック教室やキッズクラブみたいなものがあって、午前中2時間くらい、幼児連れのお母さんが集まって、子供を遊ばせ親は親友達同士でお話したりしています。幼児とセットなら、いけるんじゃないかなあ。なにより子供はこけても痛くないし、骨も折れない。うまくてもうまくなくてもそれなりにギャーギャー言って楽しいし、追いかけっこしてもいいだろうし、くるくる回れたらヒーローだし。

では小中学生は・・・子供はお金持ってない。親が連れて行くのでなければ、なかなか子供たちだけでスケートというのはないでしょうね。というわけで、親が連れて行くというと、本格的に習わせようと親が思っている場合なわけで、そんな親がそうそう沢山いるわけがない。それでも昔よりは増えているようなんですけどね。私が時々行く高田馬場のシチズンプラザは、最近本当に上手な子供たちが増えてます。

シチズンプラザ
http://www.citizen-plaza.co.jp/service/skate/index.html

そんなわけで、特に上手くなりたいと思っていない、大勢の一般客を取り込むには、ちょっとスケートリンクは敷居が高すぎるのですね。

そこで・・・子供の頃に、日本全国なるたけ沢山の学校で、授業にスケートを取り入れよう!その費用は、まあ、この際税金でもかまいません。北海道ではスキー授業などあるし、校庭に氷はって、なんちゃってリンクで滑ってるし。そして、子供の頃に一通り最低限滑れるようにしておきます。そしたら、オトナになってから、あるいは老人になってから、授業帰り、仕事帰り、老後の趣味として、リンクに足を運ぶように・・・ならないかなあ。

そして・・・若いカップルなんかどうでしょう。カップルの片方さえ滑れれば、片方は多少下手でも、くっつきながら滑って楽しげじゃないですか。両方上手ならなおのこと、アイスダンスよろしく踊ったりなんかしたら、もう最高でしょう。カップルぜったいいけるよ!!!というわけで、カップルが気軽に行けるような、そんなオシャレさがほしいです。はっきり言って、今のスケートリンクはどうにも地味すぎ。アリーナの床はくたびれてるし、待合いの座席は公園のベンチみたいなチャチなやつ。寒いから滑ってると鼻水出るし、暖房室は狭くて入りきらないし。リンク内での飲み食いは屋台のしょぼいものばかり・・・というわけで、およそ普通のカップルが雰囲気を楽しみに行くような状態ではないです。これは、リンク経営者がいろいろ工夫してほしいなあと思います。

あと・・・大会などを催すと、集客力のあるリンクならそれで収入が見込める・・・かもしれません。こどもスケート教室の発表会などもいいかもしれません。ひとつの教室に必ずひとりはかなり上手な子がいるもので、けっこう見応えあるんじゃないかなあ。選手にしても、人前で演技することに慣れる訓練にもなるし。クラスメートが出るって聞いたら、友達なら応援に行くんじゃないかなあ。お祭りっぽく団体戦にしちゃうと、もっと盛り上がるかもしれません。審査員は観客の皆様!とか。

さらに・・・地元の企業や放送メディアなどがリンクとタイアップして、将来のメダリストを育てる一翼を担ってもらうこととかできないでしょうかね。リンク内に広告出したりして。同様に、JRの駅とかにスケートリンクの広告をどんどん出してほしいですよね。目にとまるとやっぱり「今度行こうか」とかいう話になるかもしれない。でもそんな広告見たことない。もっと宣伝努力してほしいです。まあ宣伝にもお金かかるんだけど。

大きな話では、日本スケート連盟・・・通称スケ連が主催するアイスクリスタルというファンクラブの会があります。年会費6000円ほど取ってやっています。その収入がどんな風に使われているのかは分かりませんが、リンクがつぶれたらスケ連もくそもないのだし、国会議員が会長をやってるのだから、もう少し目立った動きがほしいと思ってしまいます。まあ、人が動くにはそれだけお金がかかるので、なかなか難しいのかも知れませんが。スケ連の強化指定リンクになると、少し援助金のようなものが出るらしいのですが、それも限界あるでしょうし、それよりは、長い目で見て日本のスケート文化がしっかり根付いて育つような、役所や企業への働きかけ、イベントの開催、ビジネスモデルの提案などをしてもらいたい。

日本スケート連盟
http://skatingjapan.or.jp/index.html

アイスクリスタル
http://www.icecrystalnet.com/

そして・・・こうした経営努力だけではどうしようもないのが、電気代。なにせこの温暖化の時代に、あの広大な空間を冷凍庫並の温度に保つわけですから、途方もない冷蔵電気代がかかるはず。ボウリングやプールにはこんな心配はありません。スケートリンクはこれがやっぱり最大のネックです。まして今、原油がとんでもなく値上がりしているので、千葉県船橋市にあるスケートリンクは、この原油高で廃止の危機にさらされているほどです。でも、おなじ千葉にある「アクアリンクちば」では、港湾地区の様々な工場群の排熱を利用した発電をスケートリンクに利用した、新しいタイプのリンク冷蔵で通年営業を実現しています。これは注目だなあと思います。最近出てきた、プラスチックのリンクは、スケート靴のブレードが痛むし、滑り具合がだいぶ氷と異なるようで、練習には使えないそうです。あとは、リンクの屋根全面太陽電池板貼って、太陽光発電するとか。風力発電でもいい。技術立国日本、がんばれ!

船橋市スケートリンクが閉鎖の危機
http://blog.ringonice.main.jp/?eid=751239

リンク施工メーカー「(株)パティネ商会
http://www.patine-jp.com/jp.html

アクアリンクちば
http://www.aquarink-chiba.jp/


これから先、今のままではリンクの閉鎖はまだ続くでしょう。いやーほんとになんとかなってほしい。折角ここまでメジャーなスポーツに育ってきたんだから。俺に出来ることならなんでもする。といってもリンクに行くか募金するくらいしかできないけど。日本のリンク界、がんばれ〜。


余談ですが、通年のスケートリンクの多くは、実は深夜営業しています。昼間は一般客、夜は選手の時間。日本のスケートを最前線で支えている選手たちは、夜中の2時3時にリンクで練習します。そのため、コーチの家に家族共々泊まり込みすることもあるそうです。びっくりですよね。こんな状況とは知りませんでした。夜中って・・・いつ寝るんだよと思うのですが。涙がちょちょぎれます・・・