今日は仕事帰りにお芝居を見てきました。
白狐舎 第2回公演 「 Zero Plus 0+ 」
作・演出 三井 快
「故郷を失った人々の思いの断片―」
音楽のつてで知り合った声優さんが出るというので、見てきました。
生まれて初めて「下北沢」というところへ行きました。奇跡的に下北沢駅までは迷わず到着。そこからシアター711までは徒歩5分ということだったので、着けばまあわかるだろうくらいに思っていたら、駅前はどえらい雑踏で、まったく方向感覚のない私はもうピンチ。スマホのGPS機能は使いたくないので、人に聞きつつ、徒歩5分が15分になりましたが、なんとか開始前に着きました。
シアター711は、ぱっと見てそれが劇場だとはわかりませんでした。飲み屋かな、といったような、小さな小さなビルの2階。こんなところに劇場が?と思うような。でも、狭い階段を登った先に、小学校の教室と同じくらいの広さの、小さな小さなシアターがありました。
舞台と客席の距離は1mあるかないか。
役者さんの息づかいまで聞こえてきました。
映画見るのとは大違い。本当にそこに人がいるし、近いし。
舞台って、すごいね。本当の人間が、生で演じてるのが、こんなに強烈に感じるものだとは知りませんでした。キョリが近いというのが大きかっただろうか。
お話は、福島原発のすぐ近くに住んでいた人たちの10年後が舞台。
とにかく重かったです。10年後の世界の想像がリアルかどうかなんてわかるわけもなく、ただただ、重かった。
役者さんが喉の奥から振り絞る嗚咽の声や叫びを聞くたびに、心が張り裂けそうにビクッとなりました。
終わった後もしばらく立ち上がれませんでした。
こういう舞台を観るのは初めてでしたが、内容が重いので「おもしろい」というのとは違いますが、なにか新しい世界を見つけた感動があり、こうした舞台をまた観に行きたいなと思いました。
映画は、絵はきれいだしCG効果すごいし、音楽も遠慮なく場を盛り上げて、向こうから迫って来る。でも舞台は音楽はひそやかに、激しい3DのCGもなく舞台装置もなく、ただただ役者さんの表情やしぐさ、息づかい、を聴いて感じ、その会話から情景を想像したり、話のつじつまを読み取ったり。観る人から近づいていくような、そんな感じでした。
来ている観客さんたちは、たぶん役者さんのごひいきさんでしょうか。なんとなく年配の方が多かったような気がします。私の隣は顔に深い皴を刻んだ、少し人生にくたびれた感じの白髭の老人でした。終わった後に役者さんが客席に出てきてお話ししたりできるのは、すごいなあ。こういう、客席と舞台の距離が近い、普通に話せる関係って、なんかいいなあと思いました。
こういう小さな舞台が、あちこちの小さなシアターで実は毎日演じられているんだなあ、と、しみじみ感動しました。
私の父は学生時代を東京で過ごしている間に歌舞伎や大衆演劇をよく観に行ったと言っていました。今でも歌舞伎は時々観に行っています。私も子供の頃に連れて行かれましたが、面白さがまったく分からず、超時空洋裁マクロスの映画のほうがおもしろいのに、と思っていました。でも歳とともにこういうものの味わいが有難いものに思えてくるのが不思議で、少し父に近づいたかなという気がしました。