つい最近、ディアパソンというメーカーの中古アップライトピアノを手に入れました。
値段は25万、中古アップライトの中で、これでも安い方なのです。でも、安いから買ったわけではありません。むしろその逆。沢山のピアノを弾き比べて、音やフィーリングが一番気に入ったものにしました。そしたら、偶然一番安いものに・・・。幸運というべきか。まあ、幸運なんでしょうな。
そこで、前の日記にも書きましたが、「海の上のピアニスト」のメインテーマ「Playing Love」を毎日練習しています。
私はピアノをまともに習ったことがありません。20歳からの独学。だから、ピアノ教室に通っている人たちが通常学ぶであろう曲集を、私は一切やってきませんでした。バイエル、ソナチネ、ツェルニー。全くなにも知りません。指もそれほど速くは動かない。
そんな私には、「Playing Love」の楽譜はなかなかに大変です。
まず、右手が非常に速い。
そして、ジャズ特有の不協和音。
リズムがわけわからない。3連符どころか、6連符、7連符、9連符!!
最後に。ピアノのタッチが重い。これはどうしようもないんだけど、とにかく重い。それがいい時もあるけれど、この曲を弾くには、ちょっと辛い。
それでも最近、なんとか形になってきたような実感を得るようになりました。
ジャズを練習するのは初めて。でも、弾いてみてなんとなく感じるのは、「あまりややこしく考えるな」ということ。考え始めると、楽譜通りにきちんと弾かなきゃとか思い始めると、もう大変。7連符なんて、どうやってちゃんと弾けってんだ。それよりは、感じるままに、自由に、弾いていて気持ち良くなるような弾き方を目指すようにしています。
速いパッセージはハノンでしっかり指を作ってという、盲目的な信仰があるような気がします。それを全否定はしません。筋力のトレーニングにはなる。でも、うちにある重いタッチのピアノでこのトレーニングをやると、必ずといっていいほど腱鞘炎になります。というか、なりました(過去形)。それほど無理にやっていたつもりもないのに、です。まあ、大丈夫な人は大丈夫なんでしょうが、私が特別骨や関節が弱いのかもしれません。
特に薬指と小指はとても弱いので、ここが一番来やすい。ハノンをやり始めると、自分でもはっきり自覚しますが、なんというか、指先の力だけで弾こうとしてしまいます。トレーニングだから、指を鍛えなければ、という気持ちがあるからでしょう。多分、それが悪いんですね。普段の練習ではまず指が痛くなるようなことはないから。
練習する時の精神状態というのは、たかが練習とはいえ、とても大切なものですね。
「特訓だ、気合だ」
「脱力だ、テキトーでいいや」
「絶対に間違わないように弾こう」
「気持ちよく弾くことだけ考えよう」
「ゆっくりでいいからきちんと弾くことだけ考えよう」
練習の時、弾いた後で「ああ、今のはなんかうまくいったなあ」と感じる時があります。
そういう時というのは、たいてい、「気持ちよく弾こう」ということだけ考えている時。その時の手の動きを自分で見てみると、手首を上下左右に自在に動かして、なんとなく腕から先全体が踊っているような、そんな感じです。
思った気持ちが、腕に乗り移ったような。
指先から鍵盤にかける腕の重み。
強弱と速度の揺らし。
ソフトペダルとダンパーペダル。
気持ちをピアノに預けると、なんとなくこれらの要素がみんな、うまく連動してくれるような気がします。
だから、思ったのです。どんな難曲でも。
「気持ちよく弾こう」
そう思ったら、きっと弾けるようになるに違いない。不可能はないと信じて。時間はかかっても、いつか必ず弾ける。