真の剛力

大相撲の魁皇関が、引退した。

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私は彼が入幕したころからのファン。当時まだ私は学生だった。


彼の相撲は、強烈な腕力にものを言わせた、豪快な右上手。

右手一本で力士を投げる人は、角界広しと言えども、彼しかいない。






力士には、いろんなタイプがいる。体重にものを言わせて電車道を突き進む力士、まるで足が土俵に吸いついているのではと思うような下半身の安定でもって寄り切る力士、体重は軽いがその軽さを武器に目まぐるしく飛び回ってかく乱する小兵力士、やたら張り手をしてひんしゅくを買う力士、土俵上でのパフォーマンスを生きがいにしている力士。



どれがカッコいいとか正しいとかはない。ただ、見る人それぞれ、好きなタイプというのはある。



私は、魁皇の、地味ではあるが、小手先技を使わず純粋な瞬発力パワーで持っていく、あの相撲が大好きだ。見ていて心の底からスカッとする。ぐわっと心を揺さぶられる。当時全盛だった横綱貴乃花を右上手一本でぶん投げた取り組みは忘れられない。本当に、心の底からゾクゾクした。






魁皇関が出てくる前、私は霧島という力士のファンだった。霧島もまた、当時角界一の力持ちと言われた力士だ。私はもともとこういうタイプが好きなのかもしれない。






そんな魁皇だから当然、横綱昇進をずっと期待していた。何度かそのチャンスもあった。が、ここ一番というところで、あとひとつ伸びなかった。応援していて何度も歯がゆい思いをさせられた。

そうこうしているうちに怪我が増え、優勝から遠ざかるようになって久しい。もうそろそろかと覚悟はしていた。









が、最期の最後で、魁皇は、実に魁皇らしい、素晴らしい歴史を作ってくれた。






幕内勝利数歴代単独一位。1047勝。









この記録は、単なる剛力で成せるものではない。歴代の横綱でここまで勝利数を伸ばした人はいないのだ。つまり、横綱になるよりも難しいということだ。

彼の、相撲に対する真摯な姿勢があって初めてできたことだと思う。彼と同時期に三役以上にいた力士たちは、曙、貴乃花若乃花貴闘力千代大海、白鳳、朝青竜など。みんな一度はプライベートでテレビをにぎわせたりした力士ばかり。だが、魁皇にはそれが一度もない。魁皇は人前に出て目立つのがあまり好きではなく、ただ相撲を愛していただけ。






そんな彼に、なんとふさわしい記録だろう。横綱を嘱望されながら届かなかった。そのかわりに、もっと素晴らしいものを彼は手にしたのだ。










今後は親方として第二の人生のスタート。相撲を愛し真摯に取り組む彼が育てる新時代の力士たちに、また新たな夢を託したい。










最期に。本当に、長い間、お疲れ様でした。幕内勝利数歴代一位、おめでとう。